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情報ラジエーターとは。開かないと分からないタスク管理は見える化ではない

ツールを開かずに「今、返事が来ていない依頼は何件か」を答えられる状態を作ります。

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仕事の依頼を流れる仕組みにするうえで、この記事が扱うのは見える化の部分です。チームが探しに行かなくても最新の状況が目に入るように掲示したものを情報ラジエーターと呼びます。アジャイル開発の現場から出てきた言葉です。

タスク管理ツールを入れたのに、「今どこが詰まっているか」を答えるのに数分かかる。そういう状態があります。この記事が答える問いは1つです。ツールに情報が入っていることと、見える化ができていることは同じか。

朝会の前に、管理者が数分かけて数えているもの

制作チームの管理者が、朝会で「今どこが止まってる」と聞かれるとします。答えるために、タスク管理ツールを開き、プロジェクトを3つ切り替え、期限を過ぎた依頼を数えます。3分かかります。

情報が抜けているわけではありません。記録もされています。それでも、聞かれるたびに同じ操作をすることになります。

記録されているかどうかと、聞かれてすぐ答えられるかどうかは、別の問題です。導入検討で確かめたいのは後者のほうです。

情報ラジエーターとは何を指すか

Agile Alliance の用語集は、情報ラジエーターを次のように定義しています。チームが人目につく場所に置いた掲示物の総称で、手書き、描画、印刷、電子表示のどれでもよく、チームの全員と通りがかった人が最新の情報を一目で見られるもの、としています1。例として、自動テストの件数、ベロシティ、インシデント報告、継続的インテグレーションの状態が挙がっています。

この定義には条件が2つ入っています。人目につく場所にあること、そして一目で見られることです。探して開けば分かる、は条件に入っていません。

語を作ったのは Alistair Cockburn で、2001年のことです。情報の動きを熱や気体の広がりにたとえた言い回しの一部でした。同じ用語集は、1980年代にトヨタ生産方式で使われていた「目で見る管理」が、この考え方を先取りしていたと書いています2。

ツールに入っていることと、目に入ることは何が違うか

タスク管理ツールは、開いて絞り込めば必要な情報を出します。この状態を、レペリオでは社内で「情報の冷蔵庫」と呼んでいます。中身は保存されていますが、扉を開けた人にしか見えません。

冷蔵庫と放射の差は、見るのに動機が要るかどうかです。開く手間があると、開く理由がある人だけが開きます。管理者は朝会の前に開きますが、依頼を投げた担当者は、返事が来ていないことを思い出したときにしか開きません。

その結果、止まっている依頼に最初に気づくのが管理者になります。依頼を出した本人より遅れて気づく人が、催促を始めることになります。

ダッシュボードを作れば済む、という見方はあります。ただしダッシュボードも、開かないと見えません。定義の条件は掲示の作り込みではなく、探さずに一目で見えることです。作ったあとに誰が何回開いたかを数えると、放射になっているかどうかが分かります。

何を放射し、何を放射しないか

全部を人目につく場所へ出すと、今度は量で見えなくなります。出す対象は、見た人がその場で動けるものに絞ります。

同じ用語集は、情報ラジエーターを使うことが、情報そのものに加えて2つのことを伝えると書いています。チームが訪問者に対して隠すものを持たないこと、そしてチーム自身に対しても隠すものがなく、問題を認めて向き合っていることです3。裏を返すと、都合の悪い数字を外した掲示は、放射の役目を果たしません。

業務の依頼に置き換えると、出す価値があるのは次の3つです。

逆に、完了した依頼の累計や月間の処理件数は、見ても次の動きが変わりません。振り返りのときに開けば足ります。

PATHWORKで開かずに分かるもの

PATHWORK では、依頼と@メンションを「パス」という1つの単位で扱います。Inbox には自分が持っているボールが、Outbox には自分が投げたボールが並びます。件数を数えるのに、プロジェクトを切り替える操作が要りません。

相手が一定時間そのパスを見ない場合、パスは送信者の通知に自動で戻ります。依頼者が思い出さなくても、止まった依頼のほうから戻ってきます。掲示を見に行くのではなく、向こうから目に入るという点で、放射に近いのはこの動きです。

月次サイクルでは、先月終わったこと、今月のタスク、来月の選択肢を同じ画面に並べます。「気づいたら半年経っていた」を防ぐのは、月末に集計する作業ではなく、並んだままになっている状態のほうです。

限界も書いておきます。ツールを開かない人には、Inbox も通知も届きません。通知を切っている担当者がいるなら、そこは仕組みではなく取り決めで埋めることになります。

導入前に確かめておくこと

まとめ

情報ラジエーターの条件は、探さずに一目で見えることです。ツールに入っているだけの状態は、この条件を満たしません。導入検討で確かめるのは、記録が揃っているかではなく、開かずに答えられる数字がいくつあるかです。

全部を出す話ではありません。見て次の動きが変わる数字に絞らないと、量のほうで見えなくなります。掲示を増やす前に、減らす作業が要ります。

次の一手として、明日の朝、タスク管理ツールを開く前に「今、返事が来ていない依頼は何件か」を口に出して答えてみてください。答えられなければ、その数字はまだ放射されていません。依頼1件ごとに、届いたことと受け取ったことを分けて追う話は、メンションの記事で書いています。

参考

本文中の番号をクリックすると、その記述の根拠にした原文にジャンプします。原文は改変せず、英語のまま載せています。

  1. Information Radiators(Agile Alliance Glossary)
    "Information radiator" is the generic term for any of a number of handwritten, drawn, printed, or electronic displays that a team places in a highly visible location, so that all team members, as well as passers-by, can see the latest information at a glance: count of automated tests, velocity, incident reports, continuous integration status, and so on.
    用語集の What is Information Radiators? 節(本文の定義と、挙げた例の根拠) 本文の該当箇所へ戻る
  2. Information Radiators(Agile Alliance Glossary)
    1980s: the notion of "visual control" originating in the Toyota Production System is in anticipation of "information radiators" ... 2001: the term "information radiator" is coined by Alistair Cockburn, part of an extended metaphor that equates the movement of information with the dispersion of heat and gas
    用語集の Origins 節(本文の「2001年に Alistair Cockburn が作った」「トヨタ生産方式の目で見る管理が先取りしていた」の根拠) 本文の該当箇所へ戻る
  3. Information Radiators(Agile Alliance Glossary)
    Intensive use of information radiators conveys two messages in addition to the information itself: the team has nothing to hide from its visitors (customers, stakeholders...) the team has nothing to hide from itself: it acknowledges and confronts problems
    用語集の Expected Benefits 節(本文の「隠すものを持たない」「問題を認めて向き合っている」の根拠) 本文の該当箇所へ戻る

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どの数字を人目につく場所へ出し、どれを振り返り用に回すかは、チームの依頼の本数と役割の分かれ方で変わります。今どこを開いて数えているかをお聞きしたうえで、PATHWORKでの組み方をご提案します。

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